Knowledge: Leather parts
革の適材適所:革は“生き物”!パーツによって“性格”あり! 革の適材適所
2009年発行 「日本の革 2号」より
革は動物本来の自然な形をもっている。牛革の場合、背中がいちばん硬く、腹にかけて徐々に柔らかくなっていく。皮をなめす段階において、ある程度均一な厚さにすかれているが、強度は明らかに異なってくる。
ここで、興味深い情報がある。革の取材をすすめていて、ある職人が教えてくれたのは、「世界的に有名なブランドはね、一枚の革から個のバッグしか作らないんだよ。繊維の方向性、丈夫さ、美しさなどを考えると、どうしてもその結論になる。親子何代にわたってもゆがまずに愛用するには、それしかない」ということ。革は繊維が背中から放射線状に流れている特性があり、「ゆがまない」構造で作るには、切り出す部位がものをいうことがわかる。
しかし、そのような素材使いをしていては、一般には手が届かない価格帯になってしまう。商品と価格が見合っており、手が届く範囲で丈夫な革アイテムを手に入れるには、きちんとした職人が責任をもって作っているメーカーのものを選べばいいのだ。使っていくうちに伸びてしまったという経験がある人も少なくないはず。これは腹あたりの革を使って作られたという原因も考えられる。また、職人が気にするのは革のパーツだけではない。それに合った縫い目、糸選びも大切になってくる。多くのレザーアイテムは、試行錯誤から生まれたベストな部位から取ったパーツを使って作られている。このことを知ると、より一層、手持ちのアイテムが愛おしくなってくるから不思議だ。
革は加工しやすいように背中から左右対称に切って使われる。これを「背割り」という。これは加工前の牛の一枚革。丸革ともいわれる。
[背(Back):最も丈夫で知られ繊維の密度が高い]
加工の段階で均一の厚さに削ってあるが、背部分の繊維の密度は高い。腹部分と比べると重さがありしっかりしている。ここはバッグにしても伸びにくくゆがみにくいので、底やサイド部分などに使われることが多い。
[腹(Belly):柔らかく重さが軽いのが特徴]
柔らかく重さも軽く、加工しやすいが伸びてしまうのが難点。そこで、バッグの内張りに使われたり、靴の中敷に使われることもある。腹部分のエッジ部分は、本当に柔らかいためほとんど使用されない。
[脚(Leg):強度があり繊維の密度に特徴が]
脚には前足、後ろ足があり、厚みもあり加工に適している。前足、後ろ足、それぞれ繊維の密度に特徴があり、後ろ足のほうが繊維密度が高い。バッグの持ち手やサイフなどの小物の加工に使われる。
ちなみに他の素材は?
[豚(Pig )]
丈夫で柔らかく、通気性が高いことで知られる豚革。やはり背中が一番頑丈。毛穴が大きく、革の全層を貫通しているその構造上から、靴の中敷などに使われることが多い。
[羊(Sheep)]
その毛皮とともに用いる「ムートン」で知られる羊。細かな毛が密生している保温性のよさと復元性で知られ、軍用の防寒具、介護などの医療用にも用いられる。ラムは生後1年以内の子羊。
[馬(Horse)]
体重の増減が多い馬の革は繊維が密なことでも知られる。馬革の最大の特徴は、シェルと呼ばれるお尻の部分。コードバンとも呼ばれ、弾力性がありシワが少ない高級品だ。
サイズ、デザインでも異なってくるが、ここでは代表的な商品のパーツの切り出し方を紹介。あなたの愛用品は、どの部分が使われている?