Creative: Sanko

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三紅:大胆に連なり 美しく輝く千年の文様

三紅大胆に連なり
美しく輝く
千年の文様

古来より日本人と馴染みが深い鹿革と漆。
この2つが交わって生まれた印傳は、日本を代表する伝統工芸だ。
そして今、印傳の可能性はさらに広がる。伝統が、前衛になろうとしている。

2014年発行 「日本の革 7号」より

ひょうたんにトンボ、波にうさぎ。その可愛らしい文様を見るにつけ、日本人は昔からカワイイ物が好きだったのだなと思わずにはいられない。
伝統工芸、印傳。鹿革に本漆で模様を描いたこの革製品の歴史は古く、東大寺正倉院に奈良時代のものとされる印傳の足袋が残されている。そして江戸時代には印傳が模られた小物が広く愛用されていた。日本人に最も馴染みある革製品の一つといえよう。三紅の多田司さんも、そんな印傳に魅了された一人だ。「もともとエキゾチックレザーなど様々な革でハンドバッグをつくっていましたが、ある時印傳と出合って。雅な文様にすっかり心を奪われました」

以来、印傳を使ったものづくりを進めてきた。といっても、ただ伝統に則るだけではない。多田さんの流儀は印傳を現代のライフスタイルに合ったかたちで表現すること。そこで選んだのがパッチワークの手法だ。「印傳は革のサイズが限られているため、小物製品がほとんどでした。でも、パッチワークでパーツを組み合わせていけば、大きなバッグもつくれるんじゃないかと思ったんです」
パッチワークを施すことで、デザイン的にもインパクトのあるものになった。ジワジワと人気を集め、今ではリピーターやオーダーメイドの注文も多い。伝統の技が、多田さんの製品を介して広がっていく。「より多くの人に、印傳の魅力が伝わる製品をつくっていきたい。やっぱり、古くからあるものは大事にすべきですから」

経験豊かなハンドバッグ職人の多田さん。手練れの技術が印傳バッグという新境地を開拓した。

三紅を象徴するパッチワーク印傳の制作風景。それぞれのパーツの配置が、製品の見栄えを左右する。これらはすべて多田さんが決めており、一つとして同じ配列の製品はない。

パッチワーク用に型でパーツを抜いていく。裁断はムダなく、手早く。さすがの技術だ。


印傳とは

印傳という呼称自体は江戸時代に生まれたが、鹿皮をなめして漆で模様を描いたものは1000年前からあったとされる。古くから武具や袋物などに用いられてきた。産地としては山梨県の甲州印傳が有名だが、奈良や東京でも生産が行われている。製法には特徴がある。印傳専用になめされた鹿革の銀面を円滑にし、漆の入りを良くする。型紙の上から漆を塗ることで、文様が立体的に浮かぶ。代表的な文様として、トンボや波、うさぎなどが挙げられる。

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