Knowledge: Mens' Shoes

Knowledge: Mens' Shoes

メンズシューズ:紳士靴には 革の特性が如実に表れる

メンズシューズ紳士靴には
革の特性が
如実に表れる

良い靴の条件とは。知っておいて決して損のない、ひと目でわかるポイントを解説しよう。

2009年発行 「日本の革 2号」より

紳士靴と一口に言っても、その世界は深い。何百年かけて完成させたデザインを守りつつも時代性を無視することはできないし、何より歩く道具としての機能性を満たしていなければならないのだ。また、靴は実に多くのパーツから成り立っており、工程数も多い。グッドイヤーウエルト製法にいたっては200に近い工程を要するという。そのイロハを知ることは良い靴に出会うためには必要なことだ。

カウンターを確認

踵は歩行の際の起点となるので、しっかりとホールドされていることが肝要だ。過不足なく納まるフォルムであることはもちろん、その機能を高めるために挿入された、カウンターと呼ぶ芯材の形状も確認する必要がある。カウンターは土踏まずまで、つまり踵のくびれを包み込んでくれる長さと適度な硬さが理想だ。

つま先を見る

つま先にはトウスプリングと呼ばれる反り上がりが必要だ。その名の通りバネの役割を担い、歩行運動をサポートしてくれる。また、靴は捨て寸といってヌード寸より長めにつくられており、スムーズな歩行に欠かせない。靴の形状によって異なってくるが、トウスプリングの目安はおおよそ1cm前後といわれる。

ステッチを調べる

次ページで解説するグッドイヤーウエルト製法の場合、工場のポテンシャルを測るのに格好のポイントが出し縫いと呼ぶコバに掛けられたステッチだ。これが波打つことなく、まっすぐキレイに入っていれば、総じてアベレージが高いと考えて間違いない。

ヒールを決める

靴内部の足は踏みつけ部とヒールの2点で全体重を支えている。また、歩行時の重心の移動を観察すると、踵から着地した後、ローリングさせるように外側から親指に抜けていくのがわかる。これをあおり運動と呼ぶが、そのサポート役も務めている。よってヒールには、何よりも安定感が求められる。ヒール底面が地面と平行に、つまりすき間のない構造が理想だ。ヒール寸の目安は3cm程度。

木型を知る

足をつま先からから見るとお分かりいただけるように、足の起伏の頂上は親指寄りにある。フィット感を高めようと思えば靴もそのカタチに忠実であることが肝要である。が、左右非対称のフォルムは成型が難しく、熟練した職人の技量が欠かせない。


ビスポークという選択

ほんの少し前まで、日本ではアッパーに顔 料をたっぷり吹き付けるなど、均一に仕上げ ることが美徳とされていた。が、ここ数年で 価値の転換が起きた。付加価値のあるモノ作 りを志向する中で、手仕事を駆使した、つま りビスポーク工房でお馴染みだった仕様が再 評価されているのだ。考えてみれば天然皮革 は手をかけただけ、たとえようのない味わい が生まれる。そもそもが工業製品ではくくり きれない魅力をもったアイテムなのだ。その 揺り戻しは決して悪いことではない。 特徴的な仕様については下で解説するが、 右で紹介した足なりのフォルムもまた、改め て見直されたひとつだ。効率を考えれば左右 対称のほうがいいに決まっている。

土踏まずがくびれた仕様をベベルドウエストと呼ぶ。

土踏まず底面を縦に屹立させたフィドルバック、黒く着色した半カラス仕上げと相まって、足元をグラマラスに見せる工夫だ。

ピッチトヒールと呼ぶ、ヒールをテーパードさせた仕様のこと。エレガントなコナシのひとつだ。

コバの上下辺が屹立している。これは両ヅメと呼ぶ仕様で、足元がシャープに、エレガントに見える。

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