Creative: Wako Bag
ワコーバッグ:自分の足で 創作意欲が高まる素材を探す
2014年発行 「日本の革 7号」より
現在会長の和田徹さんが兄の後を継いで、昭和60年に社長に就任後、ワコーのオリジナルはスタートした。生産の中心となるのはOEMだが、それもこちらから提案したものをたたき台にすることが多いという。和田さんがオリジナルをつくる上でこだわっているのは“歩くこと”。「会社に籠って、考えてるだけではものは生まれない。姫路に出向いて、一軒ずつタンナーさんをまわれば、まだまだ市場には出ていない、面白い革に出合える。そういうものを捕まえるんです」。クロコの型押しをした後にさらに手で削ったものや、染め仕上げの一歩前で止め、手で拭いた革、そういった個性溢れる革を前にすれば、創作意欲も高まり、アイデアも浮かんでくる。和田さんは今も自ら型を切って、プロトタイプをつくリ上げるという。
高品質なヌバックの革に熟練した職人が自らの“手”で一枚一枚、柄を付けていったクラッキング・ストライプレザーのビジネスバッグや、キロを切る軽くしなやかな馬革のトート。一点ものの感覚が味わえるアドバンティック仕上げの革は、一度塗りした革の表面に、もう種類の色を塗りこんでベールのように塗膜し、濃淡をつけて自在に変化する感覚を出す。この革に使う薬品はタンナーと共同開発した。同社のオリジナルブランド「BUBONA(ブボナ)」はローマ神話に出てくる牛の守護神を意味し、革への畏怖と敬意と賛辞が込められている。たしかに同社の商品は、いずれも革に語るべき主張がある。
「ただ真面目につくっているだけではダメなんです。お客さんに、これは何?と思わせないと。それが付加価値。今の時代は、革の個性や特質を活かしたものから売れていく。私たちつくり手も、面白い素材があると夢が膨らみます」
60年の歴史を継承すべく、若い職人の育成にも力を入れている。20代から最高齢は70代以上と年齢層も幅広い。全員のネームプレートには「もっといいかばんをつくろう」の言葉が刻まれている。
靴やベルトによく使われるアドバンティック仕上げの革を使用。ベールに包まれたようなブラウンとワインの色彩が角度によって違う表情を見せる。参考商品
馬革で500グラムの軽量化を実現した、折り畳みクラッチバッグ。上部はフルオープン式で、荷物の出し入れがラクに。内部には小物用のオープンポケットが2つ付く。参考商品