Care: Troubleshooting 6

Care: Troubleshooting 6

トラブルシューティング6:濡らしたら水ジミができてしまった!

トラブルシューティング6濡らしたら
水ジミができてしまった!

2011年発行 「日本の革 4号」より

たっぷりと水を使って
シミの汚れや油を浮かせる

革製品は基本的に水に濡らすのはNGといわれる。それは水が乾くと革の中に染み込んでいた汚れや油分が、濡れた部分と乾いた部分の境目に析出してシミになるからだ。こうしたシミは表面の汚れと違って、表面を磨くだけでは落ちない。
こうした水ジミを落とすには革全体を水で濡らしてその汚れや油分をその場所から動かして取り除くのが一番。そのため、革にたっぷりと水を含ませるのがミソ。その部分だけ濡らすと、濡らした部分の縁がまたシミになるので、とにかく全体を濡らしてしまうことが肝要だ。
革が濡れることで浮いた汚れを取り除いたら、完全に乾かして保革クリームなどで再び適度な油分を与えれば元通りになる。

しっかり使いこまれ、手垢などでやや黒ずんだ二つ折り財布。外で付いた雨滴やテーブルの上でコップから飛んだ水滴の跡が、シミとなって表面にしっかり残ってしまっている。

Step 1. シミの場所をチェック

最初にどこがシミになっているか、どんなシミになっているかを確認。そのうえで水をたっぷりタオルに含ませる。“濡らす”のが目的なので、ビショビショになるくらい濡らす。

Step 2. 全体を拭きながら濡らす

汚れを取るイメージで大きく拭きながら革に水を浸していく。シミが見えなくなるまで全体を浸透させるのがポイント。洗濯のもみ洗いで汚れを浮かびださせるイメージで。

Step 3. シミが見えなくなればOK

全体にムラなく水で浸したところ。革の中まで水を浸透させておかないと逆にシミを作ることになる。この段階で表面にシミが残っているようであれば、油汚れの可能性が高い。

Step 4. 内側もシミに注意し濡らす

財布の内側には水ジミが付いていないが、汚れを落とす意味で表面と同じように水拭きする。ただし濡らすことで水ジミを作ってしまっては意味がないのでムラなく作業すること。

Step 5. 乾かして汚れ落ちを確認

風通しのよい場所で陰干しする。きれいなタオルの上などでなるべく革が密着しないように形を整えて乾かす。乾いてシミが残っているようであれば水拭き、乾燥を数回繰り返す。

Step 6. 汚れ落としと油分を与える

完全に乾いたら保革成分のある乳化性の汚れ落としで表面の汚れを落とす。手垢などはこの段階で落とすことになる。革に油分を与える意味もあるので、しっかり染み込ませる。

Step 7. 強い汚れにはサドルソープ

油分の汚れがひどい場合には、サドルソープ(皮革用のせっけん)で丸洗い。スポンジにせっけんを付けて汚れを浮かし出すようにする。洗って乾かしたら乳化性クリームで保革。

Step 8. 完成!

水でたっぷり濡らしても、完全に乾かして保革クリームを塗れば元通り。問題の水ジミはどこにあったかわからないくらいまで落ちている。また、全体的な黒ずみも薄くなった。

水ジミに効くケアグッズ

1.革にしみ込んだ汚れ、油分を落とす乳化性の汚れ落とし。The Shoe of life モイスチャークリーム(¥1,260)。
2.革の栄養補給もできる皮革用せっけん。R&DM.モゥブレィ・サドルソープ(¥840)。
3.サドルソープで洗うときに使うスポンジ。特に皮革用としてあるわけではないが、なるべくきめの細かいほうが泡立ちがよい。
4.きれいなタオル。水拭きするためのものなのであくまでもきれいなものを用意する。

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