Knowledge: Gelatin
ゼラチン:天からの贈り物を 無駄なく使い切るための 先人の知恵
2014年発行 「日本の革 7号」より
荒川区は三河島で創業した河合産業が、草加市に移ったのは1948年のこと。当初はおもにニカワを製造していたが、四代目の河合一典さんの代になって生ゼラやゼラチン原料に特化。河合さんはいまや日本でも屈指のゼラチン原料の陰のスペシャリストである。
「ゼラチンとは動物の骨や皮に含まれるタンパク質のひとつ、コラーゲンを抽出・精製したもの。その歴史は千年以上遡れます。そもそもは接着剤として使われていて、日本でも同様にニカワが接着剤として利用されていました。原料の製法と精製度合をさらに高め、食用、医薬品用としてゼラチン・コラーゲンがつくられています」
原皮には級、級、そして業界用語でいうところのペケ皮に等級分けされる。このペケ皮が、ゼラチンやニカワになるという。その工程は、革のなめしと同様、ドラムを使う(製造工程は下記参照)。「実はゼラチンは、カメラ用フィルムが大きなマーケットでした。デジタルカメラの登場は業界にとって痛手でしたが、その穴を埋めるように健康食品や化粧品用のコラーゲンに人気が出始め、現在に至っています。次の一手として研究所と協力し、ルアー用のコラーゲン原料を開発しました。プラスチックを禁止する富士五湖を中心に広まってきています」
石灰水で満たしたミキサー型ドラムに原皮を浸し、毛や脂肪など、不要不純物を除去するため、約一週間アルカリ処理。その後pH調整をかけ、水洗により数日かけて中性に仕上げる。納入先のゼラチンメーカーにて熱処理、ろ過、抽出などの工程を経て最終乾燥され、ゼラチン・コラーゲンといった製品になる。
ゼリー、日本酒などの食用、各種カプセルや錠剤、トローチなどの医薬用、カメラ用フィルムなどの工業用と用途は多岐にわたる。写真下が河合産業が開発に協力し、製品化したルアーだ。